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知る人ぞ知る瀬戸内の絶品魚(ヒラ)

○ニシン目 ニシン科 ヒラ属

ヒラ (Ilisha elongata)

 


分布

北海道太平洋沿岸、三浦半島、富山湾以南、ピーター大帝湾、朝鮮半島沿岸、渤海(ぼっかい)、黄海、中国東シナ海、南シナ海沿岸、台湾、ジャワ海などに生息し、インド周辺の海域でも稀に見られるようです。

主に沿岸域に生息し、汽水域にも入ってきます。


特徴

鱗が大きく、光を反射させてキラキラと輝いている様子がとてもかっこいい魚です!

見た目はニシンやサッパに似ており、成長すると最大で全長70㎝にもなるニシン科では最大クラスの種類です。
顔はニシンそっくり。大きな鱗は光を反射してシャンパンゴールドに輝いています。
体はとても平たく、下顎が上顎よりもよく突き出ていることや臀鰭(しりびれ)の基底が長く臀鰭軟条数は42〜51と多いこと、上顎前縁には欠刻がなく丸いことなどで他のニシン科の仲間と簡単に見分けることができます。
体がとても平たく、お腹の縁の部分はほぼぺったんこ

またヒラの歯はとても小さくて細かく、エビや動物プランクトンなどの小型の生き物を食べるのに適した形をしています。

その小ささからか、はたまた口の内側に生えているせいか観察した時は「あれ?ヒラって歯がないのかな」と思いましたがそんなことはなく、頭骨の標本を作る際、唇の皮を剥がしたときに気づくことができました笑

私が鈍いだけでしょうか?笑

この状態では一見すると歯がないように見える。真ん中の白いのは舌
骨にしてみると小さな歯があるのがわかり、一般的に見る魚とは違い横にも歯がついています。

ちなみにヒラは体だけではなく顔の骨も薄く平たいので、頭部の骨格標本を作る際には徐肉するときに勢い余ってパキッと骨を砕いちゃうこともあるので要注意です。

個人的には初めてやる場合には難易度高めで、軟骨魚類であるサメと同じくらいだと感じました。

外見だけでなく中身までも平たい、、、黒い色素を落としたかったのですが、骨が薄いうえに骨の中に色素があったので全ては上手いこと落とせなかったです(笑)

名前の由来

このおさかなはどこから見ても非常に平たく、このことからヒラという名前が付きました!

英名ではスレンダーシャッドと呼ばれています。

これにはほっそりしたニシン科の魚という意味があり、和名同様に平たい体という特徴を捉えて名前をつけられています。

ヒラがよく釣れる瀬戸内海や有明海では釣り人の間から瀬戸内ターポン有明ターポンなどと呼ばれています。

ターポンというのはイセゴイというカライワシ科のおさかなの通称で、ヒラの見た目とイセゴイの見た目が似ていることからこのような呼び方が付きました。

また、食の面でヒラとの関わりが深い岡山では、サッパにも似た見た目からサッパの別名である「ままかり」とも呼ばれることもあります。

岡山ではサッパもヒラもどちらも魚食の面でとても有名なので紛らわしいですよね(笑)

 


生態

食性

群れをなして表層や中層を泳いでおり、動物プランクトンや小魚、エビなどを食べて生活しています。

ヒラの口はアジやヒイラギなどと同じく格納式になっているため自在に伸ばすことができます!

そして獲物を捕食するときにはこの格納式の口を伸ばし、吸い込むようにして捕食します。

前回紹介したマアジのように少しでも獲物を捕まえられるように工夫されてるんですね!

繁殖

産卵期は4〜8月で、南に生息する個体は産卵の時期が早く4〜5月北に生息する個体の産卵時期は6〜7月瀬戸内海のヒラは少し遅いようで、6〜8月の間で産卵を行います。

産卵の際には主に河口域で卵を産み、河口から15キロほどの上流での産卵も確認されているようで、バラバラになって水中を漂う分離浮性卵を産みます。

仔魚はシラスのような形で、体長30㎝程になると成熟するとされています。寿命は中国沿岸や瀬戸内海の個体では約6〜8年、マレーシアの個体では2〜3年程と地域によって差が大きく、この差の理由としては温帯と亜熱帯での環境の違いによる種内変異のせいではないかといわれています。
マレーシア近海に生息する個体は比較的短命ですが他の海域よりも成長速度がとても早いそうです。


魚食

味:★★★★☆(食べやすさも考慮して)

 

身の種類:白身、寿司ネタでいう光ものにあたる
選び方は体色の銀色が強く、目が澄んでいるものが良いです!

鰓の状態を見られる場合は鰓が鮮やかな赤色のものを選ぶと良いですよ!

いわゆる光もので、刺身は非常に上品であり淡泊な味で、旬を迎えてとても脂の乗ったキアジ型のマアジのような味わいがあります!

ヒラの刺身。
見た目もアジに似ており普通に美味しそう。
身が薄いのは骨切りにしたため、小骨が当たると嫌なので大分小さくしました
また、塩焼きや煮付けにしても美味しく、様々な食べ方ができるとても美味しいおさかなです!

旬を迎えるのはで、12月から5月ごろまでが最も美味しく味わえます。

そんなヒラなのですが、広い生息範囲の割に日本では岡山でしか食文化が根付いていないため、日常生活ではなかなかお目にかかることができない魚となっています。

なぜ美味しい魚なのに一部の地域でしか食べられていないの?と思う方もいるかもしれませんが、これには訳があります。

というのも、岡山では昔から「ヒラの味、小骨なければ献上魚」と言われており、言葉の通り本来ヒラというおさかなは小骨さえなければ殿様にでも献上できるような味なんです。

しかしヒラはニシン科の魚ということもあって同じ仲間であるニシンやコノシロ同様、小骨が非常に多いおさかなのため、食べることを避けられてきました。実際どのくらい小骨が多いかというと、皮のすぐ下にまで骨があり、ヒラを刺身で食べるときにスーパーで売ってあるようなサイズの刺身の大きさで食べるととても口の中がチクチクして痛いくらいなんです、。

コノシロを食べたことのある方ならなんとなく想像がつくかもしれません(笑)

口内炎があるときにこれが刺さるとなかなかに辛いです、、。

そんな感じで、せっかく美味しい味も小骨のせいで味わうことができず、これは食べられないと判断されたため、食べ物として馴染むことがなかったんです。

そんな中、ヒラが岡山で流通しているのは骨切りという調理法で小骨をできるだけ気にすることなく食べられるようにしていたからなんです!

骨切りというのは小骨が多い魚に使う捌き方で味を1センチ以内の感覚で切ることによって小骨をさらに細かくし、小骨をあまり気にせずに食べられるようにしたものです。

有名な魚でこの捌き方がされているのは主にハモやニシンです。

岡山ではこのヒラを酢漬けにして食べる文化があり、これも酢と醤油とみりんをあわせたものに刺身を漬けることで骨を柔らかくし、より食べやすくしようという工夫だったんです!

ヒラと酢漬けの相性はとても良く、酢の酸味が加わってよりさっぱりした味になるので私としてもヒラを食べるときにはおすすめの調理法です!

ヒラの酢漬け。
材料は酢・醤油・みりんを自分の好みで混ぜ、そこに刺身を漬けて冷蔵庫で保存するだけなので手間もかからず非常に作りやすいです。
ちょうど旬の時期に頂いたので脂も結構のってました。

また、各都道府県の漁協が定める漁師が自身を持っておすすめする四季を代表する魚介、その名もプライドフィッシュ。

岡山ではそこでしか流通していない特有の魚ということもあってか、春を代表するプライドフィッシュとして指定されています。

岡山や瀬戸内近辺の一部の地域では、スーパーなどで1匹1000円程で売られているようなので見かけた方はぜひ食べてみてください!

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