○スズキ目 クサウオ科 クサウオ属

特徴
全長は最大で50cmほど。
背鰭(せびれ)と臀鰭(しりびれ)は尾鰭の付け根まで続いており、体はおたまじゃくしのような変わった形をしています。
また、胸鰭前部(むなびれぜんぶ)の軟条(なんじょう)はプルプルとした手触りで、腹鰭は吸盤状に発達しています。
頭は大きく後頭部は盛り上がる
吸盤状に発達した腹鰭
小さな歯がカーペットを敷いたように並んでいる
尾鰭基底部(おびれきていぶ)に白色斑があることで他のクサウオの仲間と見分けることができます。
体の模様は個体によって大きく違うので比べてみると面白いですよ!


模様は違いますがどちらも同じクサウオなんです!
ページトップの写真のように縞模様が全くない個体もいます。
クサウオは水深100m前後に生息しており、体を脂や水で満たしているため、体はブヨブヨとしています。
このブヨブヨはクサウオ科の魚の特徴の一つで、クサウオの仲間は深海で生活する種が多く、中には水深8000mといった他の深海魚が生息できないほどの深さで生息する種もいて、強い水圧に適応するためにこのような体の構造をしています。
他の魚が適応できない環境で生活することで敵に襲われる心配もなければ餌も独り占めできるという思い切った戦略ですね。
また、クサウオの仲間は柔軟な骨格と隙間のある独特の頭蓋(ずがい)をもっており、これらの特徴も他の魚が生息できないような深さの過酷な環境に適応するために長い年月をかけて独自の進化を遂げた結果なんです!

クサウオの仲間のシンカイクサウオ科のマリアナスネイルフィッシュ。
なんと水深8178メートルという超深海で発見されたんです!
名前の由来
地方によってミズドンコ、ビクニン、ババ、カンテンウオ、オキゲンゲなどと呼ばれています。
正式名称の由来は臭いから、というわけではなく、石川県の地方の言葉で使えないものやつまらないものに対して「くさい」というのが転訛(てんか)して「クサウオ」と呼ばれるようになりました。
グロテスクな見た目からあまり食用として利用されず、浅瀬に上がってくる産卵期になると漁師さんの定置網などにかかるのですが、利用価値がなかったことから嫌なものとして扱われてしまったのでしょう。
また、学名にもなっている「Liparis」はギリシア語で「脂肪」という意味があり、おっとりしてそうな雰囲気もあってからか英名ではスネイルフィッシュ(のろまな魚)と呼ばれています。
しかし、クサウオの仲間は干物にして食べる地域があったり、身に水分は多いですが美味しく食べられたりと食用として利用することができます!
生態
泥質(でいしつ)の海底で生活しており、尾びれを丸めてじっとしていることが多いです。
吸盤状の腹鰭は小さい時から発達しており、岩などにペタリと張り付いて水流に流されないように身を守ります。
肉食性で主に自分と同じ海底で生活する底生性の魚やエビなどの甲殻類を食べるのですが、クサウオは下顎(したあご)の感覚孔(かんかくこう)と胸鰭前部のブヨブヨとした軟条に味を感じることのできる味蕾(みらい)を持っており、これらを使って海底を探るようにして隠れている餌を見つけ、豪快に捕食します。温厚そうな見た目のわりになかなか貪欲なんですね!
ちなみに胸鰭の味蕾を使って餌を探す代表的な魚の一種に、同じクサウオ科のサケビクニンという子がいるのですがその解説はまたの機会に。

下顎の丸い窪みが感覚孔、胸鰭のピンク色の軟条は感覚器です。
味を感じることの出来る2つの器官はセンサーの役割を果たします。

クサウオの寿命は1年ほどで12月から3月にかけて産卵期を迎え、その時期になると普段生活している深場から浅瀬に上がってきてロープなどに卵を産みつけます。
クサウオの卵は沈性粘着卵(ちんせいねんちゃくらん)といって、海中を漂ったりせずに底に沈み、粘性でくっつく性質があるため、海藻の切れ端などをもとに卵の塊を形成します。
産卵後の卵は他の生き物に食べられないようにしばらくの間オスが守ります。
魚食
身は全体的に水っぽく、刺身で食べた際には、お腹側はブヨブヨとした食感であまり美味しくはありませんでしたが、背側は弾力があって食感を楽しむことができます。
また脳天の部分は水っぽくはあるのですが多少の脂がのっており、刺身で食べる分にはこの部分が一番味が良い様に感じました。
ですがやはり美味しくいただくのであれば、身が水分を多く含むので塩焼きや煮付け、刺身で食べるよりも唐揚げにするなど揚げて食べるのが相性が良いですね!
臭みもなく骨は柔らかくて気にならずに丸ごと食べられるので魚が苦手な人や子供でも美味しくいただけます!
皮が厚く、剝ぎやすいので調理も楽です。
今回身の様子の写真をうっかり撮り忘れてしまったのは痛恨のミスですね、、クサウオの身は薄くピンクがかった白色で水々しく、見た目の印象は意外と良いです。
以前リュウグウノツカイを食べた経験から、塩焼きは味がせず煮付けは調味料の味になってしまい、どちらも身がボロボロと崩れてしまうと思います、。
卵はトビコのようにプチプチとした良い食感で、肝は湯通ししてポン酢で美味しく頂くことができます。
また、下北半島のほうでは素干しにした加工品があり、炙って食べると美味しいようですよ!
他にも福島県では「むきどんこ」といって、調理しやすいように頭を落とし皮をはいだ状態で流通しています。