○スズキ目 アジ科 マアジ属
マアジ (Trachurus japonicus )
分布
日本各地の沿岸、太平洋沿岸、東シナ海、南シナ海、台湾西岸、黄海、朝鮮半島沿岸などに生息しており、特に日本海南西部から東シナ海にかけて多く見られます。
特徴
全長40センチ程になりますが、生息する地方群によって成長の度合いは変わります。
側線部全体に稜鱗(りょうりん)があり、小離鰭(しょうりき)はありません。
側線は体の中央で急に斜めに下がっており、本種と似ているマルアジとは、側線部の稜鱗の範囲や体側中央部の側線の曲がり方、小離鰭の有無などで見分けることができます。
稜鱗は一般的にゼイゴと言われる部分で、ブリやカンパチ、イケカツオなどを除くアジ科の仲間はこの器官を持っています。
稜鱗は硬いトゲのようになっており、鱗の生えている方向に逆らって触れると怪我をすることがあるので触るときは気を付けてくださいね。

一方でマルアジは体側後半の側線部しか綾鱗で覆われておらず、側線は体の中央付近で緩やかに下がっています。また、マルアジには尾柄部に小離鰭と呼ばれる小さな鰭がついています。
名前の由来
味が良いことから名前がついているというのが最も有力で、他にもアジを漢字で表したときの「参」の部分が旧暦の3月からきており、旧暦の3月は現在使われている太陽暦でいう5月にあたり、この時期がアジの旬であることからきたのではないかという説などもあります!
また、学名のTrachurusには、ギリシア語で「手触りの粗い後尾部」という意味があり、アジ科特有のゼイゴのことを表しています。
非常にポピュラーな種類で、一般的にアジといえばマアジのことを指していることがほとんどです。
名前の通り非常に味が良く、様々な調理法で美味しく頂くことができ、食卓や学校の給食などでも見られるほど私たちの食生活にとても馴染んでいます。
生態
・食性
・色は違うけど種類は一緒
マアジ は生活している環境によって見た目や呼び方が異なり、体高が高く体の黄色みが強いキアジ型と体高が低く背部が黒いクロアジ型の2種類がいます。
キアジ型は見た目の色からキンアジとも呼ばれており、比較的浅瀬にいて内湾からあまり移動しない、いわゆる根付きのアジです。内湾は餌が豊富なためキアジは丸々とした体つきをしています。


・繁殖
その後、生まれた仔稚魚は対馬暖流や黒潮に乗って異なる時期に各地に出現します。
環境の変動によって起こると言われている魚種交代に関わりのある魚で、餌であるカタクチイワシが海水温の上昇によって産卵のために活動が盛んになると、それを食べるためにマアジの行動も活発になり、漁獲量にも影響します。
・アジのゼイゴには大切な役割がある?
マアジは大型の魚達から捕食されることが多いためか、側線部を覆う棘状に発達した鱗(稜鱗)を持っており、敵から身を守ることができます!
マアジを食べようとする魚は稜鱗が口の中に引っ掛かるので食べづらいでしょうね、、、硬い棘が口の中で刺さるのを想像すると痛々しくて食べるなんて私には考えられません(笑)
それでもマアジは他の魚から襲われなくなるわけではないのですが、、、
この稜鱗には他にも水の流れを受け流すことで泳ぐ時の負担を減らしたり、敵の接近や水の流れを感じ取るセンサーなどの役割があり、マアジをはじめとするアジ科のおさかなの生活を手助けしています!
・まだまだあるアジの魅力
またマアジは、餌であるプランクトンやイワシなどを 食べる際に、口を伸ばして獲物を食べるというとても面白い技を持っています!
マアジの伸びる口は折り畳むように顎の部分に格納されており、獲物を捕食するときには折り畳んだ口を伸ばして獲物を捕らえることができるんです!
初めてアジの口が伸びるのを見たとき、その捕食の仕方に思わずびっくりしてしまいました。マアジは餌を捕食する瞬間にこの口をにょーんと伸ばすことで餌をより捕まえやすくしているんですね!
ちなみに、マアジのように口を伸ばして餌を捕まえる行動はアジ科の魚には多く見られ、アジ科のおさかな以外にもヒイラギやギチベラ、マトウダイなどもいます。
普通に追いかけて餌を食べるよりも口を伸ばした方が餌との距離を縮められ、獲物を捕まえられる確率も上がるので格納式の口を持つ魚は意外と多いんです!
この口の仕組みはあくびをするときにも見ることができ、水族館でもアジなどをじっと眺めていると見ることができます。マアジは漁港などでもよく釣れたり、 魚屋でもよく見られるので、機会があれば実際に触れて、見て、じっくり観察して見ると面白いですよ!
魚食
また、腹側が張りが強く、全体的に輝きのある個体がグットです!
大きすぎるものよりも中型ぐらいのサイズが美味しいですよ!
年中を通して美味しくいただけますが、旬は夏です。
家庭でもよく使われる青魚で、フライや唐揚げ、刺身に塩焼き、南蛮焼きなど非常に多彩な食べ方ができ、いずれも美味しくいただけます。
昔から日本各地で食用として親しまれており、その認知度の広さから水産上で重要な種としても知られています。
みじん切りにして包丁で滑らかになるまで叩いた薬味と、味噌を加えた千葉県発祥のなめろうや、それをアワビの貝殻に詰めたり、大葉で包んで焼いたりしたサンガ焼きなどなど、全国に様々な郷土料理があります。
釣り人の間ではサイズによって呼び方が変わり、10センチ程の小型のものはジンタや豆アジ 、20センチ前後のものは中アジ、30センチを超えるものは大アジなどと呼ばれます。
中アジや大アジはある程度大きいため様々な食べ方ができますが、豆アジはサイズが小さく刺身や塩焼きなどには向いていないため南蛮漬けで食べるのがおすすめです。
ですが釣りなどで豆アジが獲れた場合 は、限りある水産資源のためにも今後大きくなって繁殖して欲しいという願いを込めてできるだけ逃がしてあげて欲しいというのが本音です(笑)
漁獲量はキアジ型よりもクロアジ型の方が多く、クロアジ型は餌の少ない黒潮などの環境で育つため脂が少なくあっさりとした味がします。
一方でキアジ型の方は餌の少ない環境で育つクロアジよりも 、同じ場所に留まってあまり移動せず、餌も豊富な内湾で育つため脂がのっていて体つきもまるまるとしていて美味しいです。
また、キアジは日本全国でブランド化されており、長崎の「旬あじ」や「ごんあじ」、一本釣りによって漁獲される「野母んあじ」、他にも大分の「関アジ」や宮崎の「灘あじ」、島根の「どんちっちアジ」など多くの種類があります。また、養殖も盛んに行われており、私たちの暮らしには欠かせない大衆魚となっています。