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旗のような鰭を持つさかな(ハタタテダイ)

○スズキ目 チョウチョウウオ科 ハタタテダイ属 

ハタタテダイ(Heniochus acuminatus

 

 


分布

千葉県外房〜九州南岸の太平洋沿岸、琉球列島 、小笠原諸島、東シナ海 、イースター島やハワイ諸島を除くインド洋から太平洋にかけての暖流域などの暖かい海域に分布しています。

また、ハタタテダイは死滅回遊(しめつかいゆう)を行ういわゆる死滅回遊魚でもあり、黒潮などの暖流に乗って青森県下北半島以南の東北の太平洋沿岸部や富山県以南の日本海沿岸でも見ることができます。

 



コラム:死滅回遊って何?

 

博多弁の
スナメリ
ハタタテダイの分布の解説に出てきた死滅回遊ってなん?

死んでしまう回遊ってドユコト?
yui
死滅回遊っていうのはざっくり言うと暖かいところに住んどる魚がうっかり強い海流に流されて、本来生息していない海域に流れ着いちゃってそこで死滅してしまうことやね!
博多弁の
スナメリ
ふむふむ、、、
yui
季節が夏とかなら初めは流れ着いた海域の水温も暖かいから生きていけるんやけど、季節が変わるにつれて海水温が下がるけん本来住んどる海域の水温よりも遥かに水温が低い環境に適応できんで段々と弱っていってしまうっちゃんね〜。
博多弁の
スナメリ

あーね、なるほど。

魚は人と違って水温が1℃変わるだけでも大きな負担になるけん、元々住んどった環境よりも遥かに水温が低いとだいぶ厳しいはずやもんね、、

けど、それなら季節が変わって水温が下がっちゃう前に元の海域に帰ればいいんやないと?

yui
それがそうもいかないんよ、、

流されてきた魚たち(主に遊泳力のない幼魚)は黒潮みたいな暖流に乗って結構長い距離を移動してきとるんよ。やけん元の海域に帰ろうと思っても距離が長い上に海流が強くて流れに逆らうことができんっちゃんね。おまけに水温の変化によって弱っとるからなおさらやね。

それで元の海域に帰ることができなくなってしまった南方の魚たちは冬を越せずに死滅してしまうんよ。

この一連の流れのことを死滅回遊と言って、ハタタテダイみたいに死滅回遊を行う魚を死滅回遊魚って呼ぶんばい!

ちなみにこの死滅回遊には他の説もあって、暖かいところに生息する魚が自分たちの生息域を拡大するために黒潮に乗って他の海域に進出してるんじゃないかっていう話もあるとよ。

博多弁の
スナメリ
海流に流された結果、行き場を失って、そのまま死んじゃうなんてなんか切なかね。
yui

そうやね、。

けど、流れ着いた先に適応して定住できるようになれば自分たちの生息域を増やせるし種を守ることにもつながるけん、生き物のたくましい命の営みとも言えるとよね。

博多弁の
スナメリ
確かに!
yui
まさに生命の神秘やとは思うんやけど、でもそれはそれで問題もあるっちゃん、。

もし暖かい海域の魚が流された先で死滅することなく生き残っとったら、それはその海域の水温も高いことになるけん、そこに元々住んでいる生き物にどんな影響が出るか分からんし、地域によってはその影響でそこに住む人たちが今まで食べてきたような海産物が獲れんくなる、、なんてこともあるかもしれんっちゃんね〜。
博多弁の
スナメリ
うーん、死滅しちゃう魚からすると生き残れるのはいいことやけど、元々の環境が壊れてしまう結果そこにいた生き物に影響が出たりその地域で暮らしてきた人たちからすれば困るよねぇ。

なんか複雑やね〜、。

そう考えると自然の世界ってうまいことバランス取れとってほんとよくできとるったいね〜。

それぞれがそれぞれに適した環境で暮らせる今の状態がベストってことやね。
yui

その通りやね。

けど最近は長期的な海水温の上昇とか暖冬なんかの複合的な影響で、前に比べて海水温が高い傾向にあるけん死滅回遊を行う魚も北限が伸びたり流れ着いた先で冬を越す場合があったりとかで前よりも長い時間適応してるケースもあるみたい。

そこには少なくとも温暖化も絡んでるかもしれんね。

博多弁の
スナメリ
今までの海の環境が変わってきとるんや、、それってやばいんやない?

今ある環境を守るためにはどうしたらいいんかいな?
yui
暖かい海域の魚と元々そこに住んでた魚のお互いが同じ場所でうまいこと生きていけるような環境になるのならいいのかもしれんけど、そう都合よくはいかんやろうし、今起きてる変化が、周期的に起きるような自然の摂理なら問題ないだろうけど僕ら人間の行動や地球温暖化とかが絡んでるのならやばいかもしれんね。

もしそうなら一人一人が、買い物の時は必ずマイバッグ持参とか使ってない電気はこまめに消すとか、温暖化のことを少し意識するだけでも最終的に豊かな海につながるはずやけん、身の回りの些細なことから気をつけていけばいいんやないかな。
博多弁の
スナメリ

なるほど!

これからは一人一人が自分の身の回りでできることを考えて行動することが大切なんやね!


 

特徴

体長20センチ程になる小柄な魚です。

体高が高く、背鰭の4番目の棘条(きょくじょう)が長く伸びており、正面から見ると少し薄っぺらい体つきをしています。

眼上に1本、体に2本黒い横帯があり、胸鰭(むなびれ)、背鰭(せびれ)、尾鰭(おびれ)が黄色くとてもユニークな見た目のおさかなです!

たまに背鰭の長く伸びている棘が2本ある珍しい個体もいます。見つけたらラッキーです!

背鰭の棘条は11棘臀鰭の黒色域(こくしょくいき)が臀鰭最長軟条、つまり臀鰭の真ん中を越えないことが最大の特徴です。

よく似たムレハタタテダイとは背鰭の棘条数や臀鰭の黒色域で見分けることができます。

ちなみにムレハタタテダイの背鰭の棘条数は12本です。ただ、水中では背鰭の棘条を数えるのは難しいので、臀鰭の黒色域を見てみるといいですよ!

臀鰭の黒色域が真ん中に達するのがムレハタタテダイ、達さないのがハタタテダイです。

左の写真は本種と非常によく似ているムレハタタテダイ。

ハタタテダイの特徴を踏まえて見比べてみると面白いですよ!

ハタタテダイ
黒色域が臀鰭の真ん中を越えない

 

ムレハタタテダイ
黒色域が臀鰭の真ん中に達する

水族館なんかへ行くと「ファインディング・ニモ出てくるギルだ!」と言う方がいますが、実はニモに出てくるのはツノダシというおさかなです。

ハタタテダイはチョウチョウウオ科の魚でツノダシもチョウチョウウオ科の魚のように見えますがツノダシ科の魚で最近はニザダイ科に近い種として見られており、ハタタテダイとは別種です。

左がハタタテダイ。

右がツノダシ。

2種を見比べると確かに色合いや体の形は似ていますが、よく見ると模様や体の形が違うのが分かりますね!

ハタタテダイは吻が白いのに対してツノダシは吻部に黄色い横帯があります。

また、ツノダシには体に黄色い横帯があり、尾鰭は黒に白で縁取られているのに対しハタタテダイは尾鰭が黄色いのでこうして改めて見るとよく区別できるのではないでしょうか。


名前の由来

背鰭(せびれ)の一部が長く伸びており、この鰭(ひれ)が旗を立てているように見えることからこの名がつきました。

英名ではペナント・コーラルフィッシュと呼ばれており、和名の由来同様、背鰭が旗のように見えることからきています。

長い背鰭をなびかせて泳ぐ姿はまさに旗が風でなびいているようで名前の由来にも納得です!

長く伸びている背鰭はまるでヨットの帆のようにも見えます。水の流れを受けてブレーキの役割を果たしたり、効率よく方向転換のに役立っているのでしょうか。、、

なぜこのような不思議な形になるのか、本当に面白い特徴を持ったおさかなですね!


生態

沖縄などの南方ではよく見られる種類で水深15〜70メートルサンゴ礁や岩礁域で生活しており、雑食性で主に付着藻類(ふちゃくそうるい)やエビなどの底生生物を食べます。

福津では9月ごろになると1メートルほどの水深でも見ることができます。

ムレハタタテダイのように大きな群れで行動することはなく基本的に単独か2、3匹の少数で行動していますが、ごく稀にムレハタタテダイの群れに混ざっていることもあります。
ダイビング中にムレハタタテダイの群れを見つけたらハタタテダイが混ざっていないかじっくり観察してみると楽しそうですね!
大きさは体長20センチ程になり、夏になると産卵を行います。

ハタタテダイもムレハタタテダイも好奇心旺盛な性格なのかなつきやすいのか、飼育していると水槽の中からしばしばこちらの様子を伺っていることがあります。

以前大分のうみたまごで見た子は、水槽の前で指を動かすと餌だと勘違いしたのか指の動きに合わせて右へ左へ移動していました。余程人に慣れていたのか、とても可愛らしかったです!

今頃どうしているのか気になってしまいます(笑)

魚食

食用としてはまず知られていませんが、塩焼き煮つけなどにして食べることができるらしく、味も良いようです!

6、7月は脂がのるというということで旬はではないかと思います。
今後ハタタテダイを入手した際には実際に食べ、また感想をお伝えしたいと思います。

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